HE IS A PET.
「どーしたの。彼氏と喧嘩でもしたの?」
「は?」
突拍子のない言葉をかけられて思わず素で驚くと、行政書士の田中さんは微笑した。
「だって、朝から浮かない顔して溜め息ばかり吐いて」
「彼氏なんかいないですよ。知ってるじゃないですか」
田中さんは私より一回り年上で、バツイチシングルマザー。中学生の子供が一人。
『結婚なんて、しない方が自分らしく生きられる』と過去に悟ったという彼女は、結婚なんて、したくてもできない私の心強い擁護者だ。
「出来たんでしょ。隠しても無駄よ」
「隠すような彼氏なんていないですってば」
正直に答えながら、ちらりと怜のことがよぎる。
もしかして、外で一緒にいるときに目撃されたんだろうか。
もしそうだとしても、私と怜って恋人には見えない気がするけど。
「あら、そうなの? 最近、やけにソワソワして早く帰っちゃうから、てっきり。仕事中も時々思い出し笑いなんかしちゃって、怪しいなあと思ってたのよ」
「あ、俺も思ってた。倉橋、最近付き合い悪りぃよな」
話に入って来たのは会計士の先輩、長尾さんだ。
四歳年上、俺様気質。
人を使うことに長けていて、ペースに巻き込まれたが最後、こき使われてしまう。