HE IS A PET.
「もしもし、咲希ぃ? 何してんのー?」
午後九時半。
キッチンを片付け終え、一段落ついたタイミングでアズミンから電話があった。
「晩御飯食べて、片付け終わったとこ。怜はお風呂。アズミンは?」
「あたしは今、ローマ。『真実の口』に手ぇ入れて、食いちぎられたとこ」
「うわー大変じゃーん」
「棒読みじゃーん。ねえ、怜は元気ぃ?」
「それさあ、私に訊くより、怜に直接電話したら? 離れてから一度も電話してないんじゃないの? 」
怜はここんとこ、目に見えて元気がない。
「だってさぁ、声聴くと会いたくて堪らなくなっちゃうじゃない。怜にも言ってあるの。帰るまでは電話しないからって」
「そんなこと言わないで、電話したげなよ。声聴くだけでも喜ぶと思うよ」
「やだ。あたし、自分が言ったこと撤回するの嫌いだもん」
「私は、アズミンのそういうとこ嫌い」
「あたしは、咲希のそういうとこ大好きよ」
アズミンは、いつもふざけているようでいて、私よりうんと大人で、冷静だ。
誰に何を言われても、アズミンが怒ったり嘆いたりするところは一度も見たことがない。
いつも笑って、自分の主張を通してみせる。