HE IS A PET.
「怜が淋しがってるんなら、咲希が可愛がってあげて。あと五日で帰るから。クルーズラインのピンクちゃん、連れて帰るから楽しみにしててよ」
ああ、シャネルの財布。すっかり忘れてた。
その華やかな語感も、今の私の気持ちを持ち上げてはくれない。
「財布なんていいから、怜に電話してあげて」
三秒ほど沈黙を置いて、アズミンが言った。
「分かった。お風呂から出たら、あたしに電話するよう言って」
お風呂上がりの怜は、ナイキのスウェット上下。
朝晩寒くなり、ちゃんと湯船に浸かるように言ってからは割りと長風呂で、出てくると頬がほんのりと紅潮している。
色が白いせいもあるだろう。
アズミンからの伝言を伝えると、火照った顔を瞬時に曇らせた。
「アズミが?」
「うん。すぐ電話して」
「何かあった、とか?」
連絡しないと断言しているアズミンからの連絡に、喜ぶより先に心配する怜の生真面目さが、やっぱり可愛いと思った。
「真実の口に、手ぇ食いちぎられたんだって」
ポカンとした顔を見て、笑った。
「だから、電話してあげて。怜の声聴いたら、大魔王みたいに生えてくると思うから」