HE IS A PET.
「なるべく早くお願いね。義父がもう、長くないみたいなのよ」
声のトーンがぐっと絞られる。
「だから、いよいよちゃんと遺言をね、取っておかないといけないと思って。家族以外の立会人が、三人いれば、口頭でも有効なのよね? 義父はあなたのこと気に入ってるみたいだから、何とか説得してくれないかしら。私たちの話には、耳を貸さなくて」
平林のおじーちゃんの死期が近い、ということは再入院した時から覚悟していた。
彼の息子夫婦が金持ちのくせにドケチで、守銭奴なのも知っている。
数ヶ月も前から、相続税がどうだの、土地の権利がどうだの、株の名義変更がどうだのと、おじーちゃんの遺産分けの心配しかしてなかった。
だから分かってた。
なのに憤りを感じてしまう私は、まだまだ青臭いんだろう。
駆けつけた病室のベッドの上、平林のおじーちゃんは虚ろな表情で天井を眺めていた。
その周りを取り囲んでいるのは、電話を掛けてきた平林夫人と、その夫でおじーちゃんの息子である平林先生と、スーツを着た男性二人。
平林夫妻と懇意にしている、銀行マンと証券マンだと紹介された。
おじーちゃんの顔を覗き込んで、平林夫人が話しかける。
「お義父さん、倉橋さんがいらしてくれたわよ」
おじーちゃんは緩慢に首だけをこちらに向けて、私を見た。