HE IS A PET.
「やっぱり俺……迷惑じゃ」
おずおずと開いた唇から発せられた声は、紛れなく男のトーンだった。
「困ったなあ。女の子だと思って、引き受けて下さったんですよね。どうしましょうか」
ハの字に下がった真崎さんの眉毛を見て、私は断言した。
「大丈夫です。怜くん預かります」
もうすっかり手に入れた気分になっていた、シャネルの財布を失いたくはない。それに、
「ペットと飼い主の間に、性別の隔たりはないんでしょ。あなたのご主人様、そう言ってた」
ご主人様という単語に、彼は微かに反応した。
初対面の女にペット呼ばわりされて、沸き立つ感情は普通なら『怒り』だろうに、彼が垣間見せたものは違っていた。
恥じ入るように伏せた瞳に滲ませたのは、『淋しさ』だった。
それを感じ取って、確信する。この子とアズミンは、やはり『雇用者と被雇用者』というだけの主従関係ではない。
趣味で飼ってる、可愛い男の子か。