HE IS A PET.
アズミンに指定されたお店は、何度か来たことのあるニューヨークスタイル・レストランだった。
広々としたオープンスペースは天窓からの採光が良く、オフホワイトカラーで統一されているため、とても明るくて解放感がある。
その爽やかさにどうも浮き足立ってしまう。
きちりとズラリと整列したテーブル席のほぼ中央に、目立ちすぎる三人がいた。
「ハーイ、咲希ぃ」
ひらひらと手を振るアズミンは、明るくカラーリングした髪色に妖艶なメイク、細ストライプの開襟シャツに、シンプルなストレートパンツ。
アクセサリー以外の服飾品は好んでメンズを身に着けるアズミンの、中性的な風貌は自然と人目を惹き付ける。
マニッシュな美人の真向かいに座っているのは、可愛らしいという形容詞がぴったりの気弱そうな男の子だ。
顔をこちらに振り向けて、ごく控え目な笑顔を浮かべている。
飼い主とペアルックなんて、いかにもペットらしい。
And you? Who are you?
状況が全く掴めない私に、アズミンが紹介する。
「エリック。ドイツで意気投合しちゃって、日本までついて来ちゃった」
「Hi, I'm Erik」
差し出された手を握り、とりあえずは名乗り返す。
「I'm Saki Kurahashi. Welcome to Japan」
「ドーモ、ドーモ」
どうも日本語は話せないらしい。