HE IS A PET.


「もしかして、台風がどうたら言ってなかなか帰って来なかったのって、こういうこと?」

 外国からのお客様に悟られないよう、笑顔でアズミンを問い詰める。


「うん、実はこういうこと。ごめんねぇ。出逢った瞬間、お互いに一目惚れしちゃってぇ。それもお互い、自国から遠く離れた旅行先でよぉ? すっごくロマンティックだと思わない?」


 エリックの膝に手を置いて、うっとりとした目で彼の顔を見上げるアズミンは、完全に侵されているみたいだ。恋の病に。


「エリックのお母さんは日系ドイツ人でね、お父さんがヒスパニック系アメリカ人なの。おばあちゃんの祖国だから、日本にはすごく興味があるって」

「へえーすごい。グローバルな血統」

 ヨーロピアン、アジアン、サウスアメリカンの混血か。なるほど、容姿にも顕れてる。

 彫刻のように深くくっきりとした顔立ち、切れ長のブラウンアイズ、褐色の肌色。地毛は違う色かもしれないけれど、目を引く綺麗なプラチナブロンド。
 額と両サイドから後ろへ細かく編み上げられた三つ編みは途中で止めてあり、あとは無造作に流してある。

 何ていうヘアスタイルなのかは知らないけれど、ライオンみたいだ。

 体つきもマッチョで、手首に刺青なんかもあったりして、肉食系の臭いがプンプンする。


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