HE IS A PET.


 あれから三週間が経つ。
 
 怜を思い出しては、どうしているのか気になったけれど、私が首を突っ込む範囲外のことなのだと思うことにした。


 怜はアズミンに無理やり囲われているわけじゃない。怜が、自分の意志で決めたことだ。
 
 同情で差し伸べた手は、拒絶されるかもしれない。
 だから私は、怜から手を差し伸ばしてくるまでは、その手を取らないと決めた。

 それが、私なりの分別だと思うから。

 アズミンに頼めばいつでもレンタルしてくれるという怜には、会いたい気はしなかった。





「倉橋も送ってくぞ?」

 
 馴染みの焼肉屋さんを出たところで、長尾さんが言った。

 唯一お酒を飲んでいない長尾さんは、事務所に置いてある車を回して来て、家の方向が同じ亜美ちゃんを送って行くそうだ。


「うちまで回ると、すごく遅くなっちゃいますよ。方向、真逆ですから」

「んなこと知ってるっつの。つべこべ言わず、乗ってけ」

 って言われてもなあ……。私はそんなに気の利かない女ではない。

「わたしなら大丈夫ですよ、時間」

 にこりと笑う亜美ちゃんの目が、「空気読んで下さいね」って言ってるし。


「電車で帰ります。長尾さんに恩を売られると、後が怖いですから」

 冗談めいて言うと、長尾さんはチッと舌打ちして

「可愛げのねえ奴だな。食った肉、吐き出せ」

 と言って、私に手のひらを差し出した。



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