HE IS A PET.
遠慮がちに私の手を取った怜を、軽く引っ張り上げて起立を促す。
手を繋いだまま、十五分の距離を歩いた。
すぐ隣に感じる怜の重苦しい気持ちと、冷えきった手の温度。
それを少しでも温めたくて和らげたくて、強く怜の手を握る。
「寒い?」
「ううん。咲希さんの手、あったかい」
「あー、お酒飲んだからかなあ」
「会社の人?」
「うん。最近忙しかったから、お疲れさま会的なやつ。飲み放題プラン、飲まなきゃ損じゃん」
なんて言っても、長尾さんの奢りだけど。
「でもビールでお腹膨れちゃって、焼き肉全力で食べれなかった。無念」
敢えてどうでもいいような色気のない話題を選んで、一方的に喋る。
「帰ったらお腹空くかなー。怜は晩ご飯食べた? お腹空いてたら、うちに美味しい……」
ドイツソーセージと言いかけた自分の軽率さに、焦る。
「冷凍牛丼があるよ」
ああ、とことん色気ないなあ。