HE IS A PET.


 マンションに着き、部屋に上がり、電気を点ける。

 忙しなく動く私に、申し訳なさそうな顔をする怜。来たことを改めて後悔している様子だ。


 奥の部屋で部屋着に着替え、リビングで正座している怜の前を通り過ぎ、キッチンから振り返った。

「牛丼、食べる?」

 案の定、首を横に振られる。

「番茶と紅茶は? どっちがいい?」

「番茶」

 番茶を淹れた湯呑みをリビングテーブルの上に二つ置き、怜をならって正座した。

 気まずさを誤魔化すように、怜は湯呑みの一つに手をかけ口を付けた。が、熱かったらしい。慌てて遠ざける。


「怜」

 どうして私に会いに来たのか、アズミンと何があったのか。
 知りたい気持ちははやるけれど、臆病な気持ちが勝る。

「好きなだけ、いていいよ」

 弾かれたように顔を上げた怜は、大きな戸惑いを浮かべた。


「聞いて欲しいことがあるなら聞くけど、無理には聞かない。お茶飲んだら、お風呂入って、今日はもう寝よう。明日もいていいから。明後日も、ずっと。怜の気の向くまで、ここにいていいよ」


『ここにいていい』なんて許可のように口にする自分は、何て傲慢なんだろうと思うけれど。

『ここにいて』と願ってしまえば、怜を苦しめてしまうだろうから。

 それでも黙ってしまった怜に、胸が苦しくなる。



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