HE IS A PET.
「ありがとう……でも、」
と言って、怜はまた黙った。
その肩が小刻みに震えていることに気づく。
「……怜?」
また我慢してる。
「泣いていいよ」
自然と両手が伸びた。
抱きつくように怜の身体を包みこむと、静かな慟哭が直に伝わってきた。
背中に回した手の片方で、ふわりと柔らかい襟足を撫でつける。
怜が流す涙全て、私が吸い取ってしまえればいいのに。
あやすように髪と背を撫で続けるうち、怜の嗚咽は次第に呼吸へと落ち着いていく。
突如はっとしたように身体を離した怜は、
「ごっ、ごめんなさい」
ひどくオロオロして、私が着ている部屋着を見た。
「汚く……」
「なってない。汚く見えるとしたら、元からだから」
キャラクターのクマが寝そべって、ヒヨコとドーナツを頬張っている絵がついたトレーナーは、確か三年ものだ。少し色落ちしてる感は否めない。
いつも愛用している『AZMIX』社の可愛い部屋着は、今日は着る気になれなかった。
「これの柄違いあるよ。怜、それ着て寝る?」
えっと言った怜の顔が少し嫌そうだったから、お風呂上がりの着用を強要することにする。