HE IS A PET.


「お酒、強いんですね」


 マンションに着く間、怜はポツリポツリと話しかけてきた。
 一度沈黙してしまうと何を話していいのか分からなくなるのは私も同じで、妙なテンションを保ったままだ。


「うん、まあね。あのくらいじゃ酔わないよ。明日は休みだし、帰って飲み直すか。あ、怜は全然飲めないの?」


「うん、まだ二十歳きてないし。アズミにも禁止されてるから」


 あ、やっと敬語がくだけた。

 てか、アズミンのこと呼び捨てで呼ぶんだ。意外……でも、ないか。そういう関係なら。

 だけど、それにしても謎だ。女より女らしい男が二人……行為は成り立つのでしょうか?

 わ、私ったら何て卑猥な想像を。
 チラリ隣を見やれば、無垢な笑顔を向けられて焦った。


「あっ、運転手さん。そこを右に曲がって下さーい」

「はい右で…………このマンションですかね?」

「ハイ、ここで下りまーす」


 真崎さんに貰った『経費』で精算し、タクシーを下車する。ふと、運転手のオジサンの目が気になった。

 私と怜、どんな関係に見えるんだろう。
 スーツ着た二十五歳の私と、童顔で高校生にしか見えない怜。

 もしオジサンが如何わしい想像を働かせたとしても、私たちの関係はそれを凌駕して如何わしい。

 怜は、今夜から私のペットなんだから。


「おいで、怜」

 呼べば、オドオドしながらもぴったりとついてくる。






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