嘘から始まる運命の恋
 キスの合間に私を呼ぶケイの声は熱を宿していた。熱情のこもった声で何度も呼ばれて、胸が、体がどんどん熱くなる。

 私、会ったばかりの人とこんなこと、しないはずなのに。

 理性が発した最後の抵抗の言葉は、ケイとのキスに溺れて形を失っていく。

「マユ……」

 何度目かに名前を呼ばれて、ようやく唇が離れた。呼吸が上がっていて、私の胸が激しく上下している。こんなキス、知らない。

「飽きたら帰っていいよって言ったけど、帰ってほしくない。帰したくない」

 ケイが言いながらサックスストラップをはずして、片手で楽器をサックススタンドに置いた。潤んだ瞳で情熱的に見つめられ、私の喉が小さく鳴る。

「私も……帰りたくない」

 これも本当の気持ち。

 私の背中と膝裏にケイの手が回され、ふわりと抱き上げられた。そのまま部屋の反対側にあるソファへと運ばれる。下ろされると同時にリクライニングが倒された。ケイが覆い被さって、唇を重ねてくる。

 熱いキスもいいけれど、もっとケイが欲しい、と思ってしまう。
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