嘘から始まる運命の恋
 思わず顔をあげると、いたずらっぽい笑顔の圭と目が合った。

「恵美(めぐみ)、とか」
「だ、誰、それ!」

 私が目を見開き、圭の笑顔が大きくなる。

「お袋」
「な……」

 文句を言おうとしたけれど、それ以上の言葉は出て来なかった。柔らかくて温かな圭の唇に呑み込まれてしまったから。

 自動ドアの開く音がして、私たちはハッと唇を離した。見舞客があからさまに視線を逸らしながら病院の駐車場へと向かっていく。

 見られたんだ。

 頬を染める私の手を圭が握ってくれた。指先が絡められて、今度は恋人つなぎになる。

 病院の出口へと向かって歩き出しながら、圭が私に言った。

「またライブに来てくれる?」
「もちろん!」
「よかった。メンバーに紹介するよ」
「ホント? うれしい! ピアノの貴公子、シュウイチさんにピアノを教えてもらおっかな~」
「むー」
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