プリマネ!恋はいつでも真っ向勝負
「ムリだよ、ムリ。ゼッテー、ムリっ!!」


ここまでみんなで敦士しかいないと持ち上げれば、敦士のことだから、しゃーねぇやってやるかと言うかと思えば、そんなことはなく。

敦士はかたくななに、ピッチャーをやることを拒絶する。


「......やっぱり、僕、やろうか?
ほとんど見えないけど、一輝のグローブめがけて投げるから。一輝?」


完全拒否の敦士に、他に誰も名乗り出ないみんなを見かねて、みのるがそんなことを言い出す。

壁に向かって。


「ムリだから、みのる。
全然見えてないじゃん。
そんなんじゃ、ピッチャーどころか、他のポジションもムリよ。今日はおとなしくベンチで見てなよ」


壁に向かって話しかけてるみのるの背中を叩いて、今日のひと試合くらいピッチャーやってよともう一度敦士に向き直る。


「ピッチャーやったことねぇのにいきなりやっても、コールドになるかもよ」

「打たれてもよかです。その分バッティングで援護するけん、先輩おねがいします」


頭を下げる一輝くんに、すがるような目の一年生たち。
みんなの期待を一心に背負って、敦士は一瞬息をのんだけど、すぐにやっぱムリだとうつむいた。


「なんでよ!
そりゃいきなり決勝戦で投げろって言われてもキツいかもだけど、ここまできたのよっ!?
棄権するよりは、やるだけやってコールド負けの方がまだマシでしょ?」


もちろんやったことない人にいきなりピッチャーやれっていうのがどれだけムチャかは分かってる。

だけど、ここまできて棄権なんてそんなバカなことはない。

かたくななに拒否る敦士にだんだんムカついてきて、思わず声を荒げてしまった。



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