プリマネ!恋はいつでも真っ向勝負
敦士が強引にまとめるとみんなも声だしをしてから、四回裏の攻撃にうつる。

一番のバッターが打席に入っていくのを見送りながら、あたしもベンチの最前列でスコアブックとペンを持つ。


「今日の先発、にっしー弟じゃなかったな」

「ああ......、だね」


あたしが手に持っているスコアブックをチラ見しながら、隣に立っている敦士に目をやってから、マウンドを見る。

そこにいるのは、銀月館のエースではなく、スポーツ用のメガネをかけ、背番号10をつけた二番手の三年生。

エースではないけど、このピッチャーだってプロから声がかかっているっていう噂があるくらいで、エースに負けず劣らずの実力の持ち主だ。

息ぴったりの幼なじみバッテリーと、メディアでも話題の秀と裕貴に対して、二番手ピッチャーもメガネくんなんて呼ばれて親しまれているし、話題性だって十分。


つまり、エースを温存してるからといって、特別なめられてるとかいうわけでもないんだろうけど......。


「今日は弟出てこねぇの?」

「さあねぇ、監督じゃないから」


裕貴が出てこないとあたしたちの賭けも果たされないわけで。

だけど、そんな個人的な賭けよりも、チームとしてこれからどうしていくかの方が大事だと思うから、あえて興味のないふりをした。
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