もしも勇気が出たら君を抱きしめたい


吹奏楽部は、定期演奏会などでOBOGとの交流も多い。

そのときに、話せなくなるくらいなら、なにも言わないほうがいい。

これが僕の出した結論だった。


「・・・なら、いいですけど。先生、俺と似てますね。」


「なんで?」


「最初から無理だって決めつけて、今の関係が壊れるのが怖くて、ずっと嘘ついてそばにいる。」


二人の視線の先では、まだ岡部が号泣していて、それを伊東がなだめていた。


「・・・似てるんかもな。」


「まぁ、僕は大学で大人っぽい人探しますけどね」


そういって笑った九条はいつもの九条だった。


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