もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
「彼女はしばらくおらんよ」
「えー!先生かっこいいのにもったいな!」
「・・・ありがとう」
あまりにも無神経な発言に、言葉が濁る。本当に僕の気持ちは報われないらしい。
すると、突然伊東が足を止めた。
「・・・先輩?」
伊東はそうつぶやくと校門に駆けていく。僕のほうは一度も振り返らずに。
「先輩!なにしてるん?」
僕も遅れて校門に到着する。
「もも待ってたんよ。久しぶりに話そうと思って」
初めてみた先輩とやらは、いかにもバンドマンな風貌で(軽音サークルにはいっているらしい)、僕を見るとぺこっと頭を下げた。
それにつられて僕も軽く会釈をする。