鬼系上司は甘えたがり。
 
暑かったのか、動きやすさを重視したのか、上着を脱ぎ、ワイシャツの袖を腕まくりしている主任の腕は、この会議室のひんやりとした空気に晒されているというのに思った以上に熱を持っていて、寝不足も続いているんだろうなと、胸がギュッと締め付けられた。


私にもっと頼ってもらえる力があったら。

ちゅっ、ちゅっと首筋にキスを落とされながらも、どうしても悲観してしまうのは、こういうときに頼りになれない自分の力量の無さだ。

主任がこんなにも疲れているのに、一つも助けになってあげられない無力感が、彼の腕に触れている自分の手に無意識に力を込めさせる。

それでも思わず「……ん」と声を漏らしてしまうと、ドSスイッチが入ったのか、フッと不敵に笑った主任が首筋への愛撫を強めながら言う。


「あー、やべ。なんか変な気分になってきた」

「……か、会社ですからお控えあそばせ」

「なんだそれ、どこのお嬢様だよ」

「いや、そ、そうなんですけど……あんまりされると、さすがに困っちゃうっていうか……」


実は昨日も襲われかけた。
 
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