鬼系上司は甘えたがり。
 
社内という、いつ誰に見つかるかも分からない独特の緊張感と背徳感に身も心も麻痺させられかけたけれど、ふと現実に戻してくれたのは主任のスマホに掛かってきた一本の電話で。

なけなしの理性で抵抗を試みるも、ささやかすぎて一つも抵抗らしいものにならずに順調に剥かれかかっていた私は、チッと舌打ちし、渋々通話を始めた主任を横目に、これ幸いとばかりに会議室から逃げ出したのだった。

あのあと、自分のデスクに戻ってくるなり、何を早まったことを……!と自分の流されやすさを猛反省したのは言うまでもなく、また、後から戻ってきた主任に「次は逃がさねぇから覚悟しろ」と甘い囁きと共に脅されたのも先に同じ。

そうして迎えた今日、まさにデジャヴ。


「薪の匂い、すげー落ち着く」

「……あっ……」


マズいマズいと思っていながらも、首筋を軽く吸い上げられただけで、はしたない声の出てしまう体の、なんと我慢の利かないことか。

途端に顔にかあぁっと熱が集まり、羞恥のあまり若干目に涙を浮かべながら、尚もがっちりとホールドし続けている主任の腕を弱々しく叩く。


「お願いです……も、もう、そのくらいで……」

「ん、もうちょい」
 
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