鬼系上司は甘えたがり。
けれど、甘く濡れた声では説得力もない。
とうに3分は過ぎているというのに、全く解放してくれる気配がない主任に、とうとう服の中にまで侵入を許してしまった私は、今日もまた主任のスマホが鳴ることを切に祈るばかりだ。
と、そんなとき--。
「薪、頭がぼーっとする……体が熱い……」
「へっ!? うわっ、わわ、主任!?」
さっきまでの熱い吐息とは全く違う、明らかに倦怠感を含んだ吐息とともに切なげに訴えられた私は、途端に力が抜けてきたのか、一気に覆い被さってくる主任の重みに耐えきれずに、ガクリと膝から崩れ落ちてしまった。
しこたま膝小僧を打った感覚があったけれど、今は不思議と痛みはない。それよりも……。
「……悪い、薪」と呟く主任にフルフルと首を振り、「失礼します」と断りを入れるが早いか、その体を回転させ頭を自分の膝に乗せる。
そして、おでこに手を当ててみると--。
「すごい熱じゃないですか!どうしてこんなになるまで私に言ってくれなかったんですか!」
「放っておきゃ治ると思ったんだ」
「そんなバカなことがありますか!主任は鬼だけどちゃんと人間なんですよ!? 辛いときは辛いって言葉にして言ってくれなきゃ、鈍い私には分からないんですからっ!」