鬼系上司は甘えたがり。
あまりに熱いそれに、うっかり冷静さを欠いた私は、病人なのに思わず叱りつけてしまった。
目尻にジワリと熱いものが浮かぶ。
どうしてこの人は肝心なことほど言ってくれないのだろう、どうして私は、そういう性分なのだと分かっていながら、こんなにも好きなのに全然気づいてあげられなかったんだろう。
表情だけは素直だと思っていたけど、自分の体調のことについては、どこまでも我慢し、ポーカーフェイスを貫こうとするなんて……。
とんだ素直詐欺じゃないか。
「……薪、泣くほど俺が好きになったのか?」
「はいっ!?」
「ちょっと倒れたくらいでそんなに取り乱すなんて、なんだよ、超可愛いヤツだな」
「ばかっ……!」
私を見上げてへにゃりと笑う主任の顔は、叱られているのにとても嬉しそうで、もしかしたら主任こそM気質なんじゃないだろうかと疑惑を抱いてしまうほどに、それはそれは、見事にとろけきった幸せそうな笑顔だった。
こんなときに不謹慎だけど、この人どんだけ私のことが好きなんだ、と思いがけない胸キュン発言に心で盛大にツッコミを入れてしまう。