鬼系上司は甘えたがり。
たかが24歳の小娘相手に、これじゃあ“鬼の新田真紘”がまるっきり形無しじゃないですか。
それに、あとどれくらい私をキュンとさせれば気が済むのだろうか、不意打ちで幸せそうに笑われたら何も話してもらえなかったことも許せちゃうから、笑顔詐欺もやめてください。
くうぅ、主任の方が万倍可愛い……。
そんなことを思いつつも、悠長に構えている余裕はないので、ようやく冷静さを取り戻し今するべきことがハッキリした私は、なんとか主任の体を起こすと、ぐったりと力なく私の肩に頭を預けてくる彼に手早く確認を取ることにした。
荒い息遣いで呼吸をし始めた主任は見るからに辛そうで、医務室で休ませなければならない使命感に駆られるままに、早口で言葉を紡ぐ。
「主任、辛いとは思いますけど、医務室まで歩けますか? もうこれ、休まなきゃダメです」
「ん……だな。それくらいなら問題ない」
「よし、じゃあ行きましょう。私の肩に腕を回してくださいね、あと、できるだけ体重も預けて。少しの辛抱です、歩いてください」
「おう」
ついこの間まで干物だった私に、残念ながら大の大人の男性を担げるほどの体力はない。