鬼系上司は甘えたがり。
 
応援を呼ぶにしても、弱っている姿を見られることに、きっと主任はいい気はしないだろう。

私だからここまで弱った姿を見せてくれるのだと思って、負担をかけることにはなるけれど、フラフラと立ち上がった主任を支え、医務室まで自力で歩く手助けをすることにする。


「薪、伝染したらごめん」

「やだなぁ主任、ごめんなんて一番主任に似合わない言葉じゃないですか。謝るヒマがあるなら、ちゃっちゃと元気になってください」

「……くそ、覚えとけよ」

「はいはい」


もはや主任には鬼の片鱗もない。

軽くあしらうと、主任は口をへの字に曲げて大いに拗ね、復讐だとばかりに私にグイグイ体重をかけるので、また膝から崩れ落ちそうになる。

でも、これくらい元気があれば、1日2日養生したらすっかり元の鬼に戻れるだろう。


けれど、その日の夜--。

医務室に送り届けてからしばらくして『早退する』と連絡をもらっていたので、急いで仕事を片付け、スポーツドリンクや熱冷まシート、滋養のある食材を大量に買い込み主任の部屋へ駆けつけた私に、衝撃の事実が襲いかかる。
 
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