鬼系上司は甘えたがり。
 
「インフルエンザって、こんなに辛いモンなんだな。初めてかかったけど、心折れるな」

「うぇい!?」

「あのあと、病院にも行って診てもらったんだけど、一週間会社に行くなって言われたわ」


ま、マジでか……。

なんなのこの人、インフルエンザにかかっていたのに普通に仕事をしていたの!? ていうか、見た目あんまり辛そうに見えないんだけど本当にインフルエンザなんだろうか。

ベッドから起き上がり腕を組むと、偉そうにフンと鼻を鳴らしてそう言った主任は、唖然とする私を見て、ドS顔でニヤリとほくそ笑む。


「良かったな薪、これで一週間、俺の看病ができるぞ。思いっきり甘えてやるから覚悟しろ」

「さ、詐欺だ……」


力なくポツリと呟いた私の声は、部屋の壁に虚しく吸い込まれていくだけだった。

この鬼、色々と頑丈すぎる……。





それからの一週間をざっと纏めると、こうだ。

食事は全て、あーん。

着替えもお風呂も付きっきり。

日中は仕事をこなす私に、まるで近くで見ているかのようなベストなタイミングで次の仕事の指示を送り、馬車馬のように働かせ。

定時を過ぎれば、あれが食べたい、これが欲しいと急にラインの内容が子供っぽくなり、部屋に着くと心底嬉しそうな顔で出迎えられる。
 
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