鬼系上司は甘えたがり。
主任の仰せのままに連れてこられたのは、彼が一人暮らししているというマンションだった。
一人暮らしにはちょっとリッチな1LDKの部屋が、どうやら主任の城らしい。
マイカー出勤の主任は映画館にももちろん車で来ていて、駐車場で半ば強引に車に押し込められたときは、さすがに何かされるんじゃないかと変に勘ぐってしまったけれど、何のことはない、外で2人でいるところを目撃されて変な噂が立ったら迷惑だから、ということだった。
だからといって主任の部屋にお邪魔するというのもどうかと思ったわけだけれど、怖くて言えないまま、こうして今に至ってしまっている。
ほんと、どうしてこんなことに……。
玄関先で縮こまりながら、自分の不運を呪う。
幸か不幸か、私も主任と同じ一人暮らしの身なので、誰に気兼ねすることもなく外泊なり朝帰りなりできるのだけど、まさか主任が相手になるだなんて、一体誰が思っていただろう。
だから私は主任が苦手なんだってば。
3年ですっかり下僕体質が染み付いてしまった私に、うまく切り抜けられるはずもない……。
「薪、まだそんなところにいたのかよ。いいからさっさと入ってこい。5秒以内」
「へ、へいっ」