鬼系上司は甘えたがり。
 
オーダーしたケーキセットを前に、手も付けられずにガックリと肩を落としていると、突如向かいの席に座った由里子がニタリと笑った。


「もうさ、裸にリボンでいいじゃん。主任は薪ちゃんを溺愛してる、薪ちゃんは主任の好みが自分だって分かってる、薪ちゃん自身がプレゼントになれば、なーんにも問題ないじゃない」

「……ッ。バカっ、ここカフェ!」

「うふふ」


しかし由里子は、こちらの制止も虚しく今日も完璧にネイルされた指でセクシーに自身のショートケーキの苺を摘まむと、あわあわと一人取り乱す私の口にそれをポイと押し込む。

少しお黙りなさい、という意味なのだろうけれど……由里子姐さん、その一連の仕草、すごくエロチックで近くの席の男子高校生が目のやり場に困りつつも顔を覆った指の隙間からチラチラ見ておりますよ。少し自重してあげて!

……むう、でも美味いじゃないか、苺。


「はぁ~あ、由里子はいいよね、忠臣さんの仕事柄を考えたら、ハンドクリームと足のマッサージ用クリームにしようってすぐに決められるんだから。主任なんて、ハイスペックすぎて何を贈ったら喜ぶかとか全然分かんないもん」
 
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