鬼系上司は甘えたがり。
 
口に食べ物が入れば、それがたとえ拒否する余地もないほどに強引だったとしても、咀嚼し飲み込むのが人間の本能というもの。

しっかり苺を堪能してから、若干の非難の目を向けつつも由里子にそう言えば、彼女は「まあね」なんて肩を竦め、どこ吹く風なご様子。

結果、私の機嫌はますます損なわれる。


「だから、裸にリボンでいいじゃん」

「それ一番に却下だから!」

「そ~お?」

「絶対そう!」


なによ、主任の好み(私以外)を知りたくないからって適当なことばっかり言って。

……完全に遊んでいるな、この毒舌美人め。


「でもさ、一つだけ知りたいことがあるわ」


すると、盛大に頬を膨らませながらヤケになってケーキを頬張っている私を見て、由里子が思い出したようにポンと手を打ち、そう言った。

知りたいこと?と首を傾げると。


「主任が薪ちゃんを好きになったキッカケ。好きなんだろうな~って思って見てはいたけど、これといってなんの特徴もない薪ちゃんのどこに惚れたのか、大いに気になるトコだわ」

「由里子ひどい」


思わず真顔でツッコめてしまうほど、目の前の毒舌美人は本当にひどいことを言った。
 
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