鬼系上司は甘えたがり。
「へへ、ただいま」
「おう」
最近ではもう、一見するとちょっと面倒くさいと感じるかもしれないようなことにも、すっかり慣れきっている私は、なんでこんなに可愛いんだ!と逆に脳内で膝からくずおれながらも、現実世界ではなんとか踏みとどまり、ふにゃりと笑ってその胸の中にポフッと飛び込む。
エプロンからほのかに香ってくる柔軟剤の匂いは、私が気に入っいるメーカーのもので、主任がインフルエンザでダウンしていたときに勝手に私が持ち込んだものだったりする。
その時ちょうど主任の部屋の柔軟剤は切れていて、買いに行く時間もなかったそうで、どうせならお揃いにしようと思った私は、部屋で一人寂しがっているだろう主任を思いながらも、ドラッグストアの柔軟剤売り場の前でしばらくムフフと笑いが止まらなかったのだった。
主任、使ってくれてるんだなぁ……。嬉しい。
そんなヨコシマな動機があったにも関わらず、しっかりエプロンから柔軟剤の匂いをさせている主任の、なんと可愛いことか。
自然と顔がニマニマと綻んでくる。
「で、麻井とは相変わらずか? 薪のことだ、上手いことやり込められてきたんだろ?」