鬼系上司は甘えたがり。
 
なんだかんだとあったけれど、私は今、快く修理を引き受けてくださった修理屋さんから例の革靴を引き取り、然るべきラッピングを施し、それを入れた大きな紙袋を携えて、主任との待ち合わせ場所で彼の到着待っていた。

時刻は午後7時半。

最近では珍しくほとんど残業をせずに会社を出られた私は、まずはその足で修理屋さんで靴を引き取り、次に『iroha』関係でお世話になっているラッピング専門店へ駆け込んで、プロの手でとびっきりの魔法をかけてもらった。


そして現在、大きなモミの木の下に佇んでいる私は、クリスマス感溢れる街を眺めながら、いちいち紙袋の中を気にしては無意味に整えてみたりしつつ、弾んだ気持ちで道行くカップルたちの向こうに主任の姿を探している。

午後4時を過ぎてから、今日中になんとかならないか、という急ぎの案件が入り、今もまだ主任は会社で仕事をしているのだ。


待ち合わせの時間は、今の時刻。

でも、夕方に入った案件のこともあるから、遅れることも、もちろん往々にしてある。

主任は私のために急いで仕事を終わらせ、息を切らせながらここまで走ってきてくれるはずだ。
 
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