鬼系上司は甘えたがり。
やがて、料理が出来上がるのとほぼ同時に手に取ったのは、オードリー不朽の名作『ローマの休日』--王女様と新聞記者のたった1日だけの恋を描いた、切なくもハートフルなもの。
オードリーなら『ティファニーで朝食を』も大好きだけど、さっきの映画館で見逃した映画の切ない恋の余韻がまだ尾を引いているのか、今日は『ローマの休日』の気分だった。
「これにします!」
「お、なかなかベタなの選ぶじゃねーの」
にこにこと顔を綻ばせながらパッケージを見せると、さすが素直じゃない主任、上から目線で鼻につくようなことをサラリと言う。
主任も好きだから持っているんでしょうが。
この人、行動と言動のギャップが半端ないな。
「それより薪、カウンターにワインとグラス出してるから取ってきてくれ。あと、スプーンとフォークも出てるから、ついでに頼むわ」
「はーい」
大型テレビの前に置かれているガラス製のローテーブルに映画のパッケージを置き、両手にほうほうと湯気の立つお皿を持ってきた主任と入れ替わるようにして、キッチンに向かう。