鬼系上司は甘えたがり。
「おまっ、パスタを飛ばしながら喋るな!手に付いたじゃねーかバカモノが!」
「ひゃー!すみませんっ!」
左隣に座る主任の、フォークを握っている右手の甲の部分--見ると確かに私が飛ばしたと思しきパスタの残骸が、テレビ画面の光に反射してテラッと光り、その存在感を主張していた。
慌てて主任の手を取り、甲に口を寄せて残骸をチュッと吸い取る。うちの家族は、私がまだ小さい頃はよくこうして取ってくれたものだ。
昔からの習慣って、なかなか抜けない。
「……は?」
「え?」
「お前、今、何やった……?」
けれど主任の、鳩が豆鉄砲を食らったような顔を見て、一気に血の気が引いていく。
もうオードリーどころじゃない。
いくら我が家の習慣だからって主任にしてしまうなんて……!火にくべて燃やされるーっ!
「うわああ、すみません!昔から我が家ではこうするのが普通だったんで、ついうっかり……。汚いですよね、ほんとすみませんっ‼」
あわあわしながらティッシュボックスを探し、何枚か引き抜くと、やっちまったぁぁと羞恥で顔を上げられないまま、主任の手の甲をゴシゴシ拭きまくる。ほんと何やってんだ私……。