鬼系上司は甘えたがり。
「……いえ、ケンカには」
「そうですか。じゃあ、今日、俺と会うことも彼氏さんは承諾してくれたというわけですね。すごいな俺、会ったこともない彼氏さんに信用されてる。……ああでも、これって、手を出さないようにっていうオープンな牽制なのかな? ははっ、これじゃあ、どっちにしても渡瀬さんには手は出せそうにないですね」
「あはは、奥平さん、ご冗談がお上手ですよ」
私に手を出してくるのは主任しかいない。
それも、とんだマーキングをしながら肉食獣よろしく虎視眈々と狙っていたくらいに。
私にしてみればかなり強引で、下僕体質が板に沁みついているからこその始まりだった。
由里子から、私が社内で密かにモテている、なんて話も聞いたけれど、実際には何もないし、絶対に彼女の思い過ごしに違いない。
それか、奥平さんとプライベートな番号やアドレスを交換したことに対して、私に“あんた、もっとしっかりしなさいよ!”とけしかけるための嘘だったかの、どちらかのように思う。
ともかく。
ペンダントトップを見つけて下さり、わざわざ届けてもくれ、こうもオープンに『手は出せそうにないですね』なんて笑う奥平さんに、由里子が感じたような疑わしさがあるはずもない。