鬼系上司は甘えたがり。
「今日は楽しかったです!」
「ふふ、俺もです」
清々しい気分で見上げて笑えば、ニッコリと優しい笑顔を作って彼も微笑み返してくれる。
言ってしまってから、まるで初デートの最後のような会話になってしまったことに気付いて若干恥ずかしくなったけれど、奥平さんも私も、別に恋人同士というわけじゃない。
奥平さんの彼女関係は分からないものの、私は自分のちっぽけなプライドのために“彼氏の許可をもらって会っている”と説明しているので、この嘘は最後までつき通さなきゃと思う。
これも奥平さんに余計な心配をかけないためだ。
けれど。
「渡瀬さん。失礼ですけど、彼氏さんと上手くいっていないんじゃないですか?」
「……え」
「あの日から何度も渡瀬さんとお会いしていますけど、今日が一番、無理をして笑っていたように思います。お会いする度にあなたが無理をして明るく振る舞っていることに気付いていました。もう辛そうなあなたを見るのは限界なんです。お願いです、俺に全部話してください」
「……、……」
ずっと胸に秘めていたことを唐突に見破られた私は、咄嗟に返す言葉もなく、きゅっと下唇を噛み締めて自分の足下に視線を落とした。