鬼系上司は甘えたがり。
「ははっ、まずはご飯食べましょうか。今日は車で来たんです。渡瀬さんの荷物は、とりあえず俺の車に置いて、ね? 体に何か入れれば、気持ちも少しは楽になるかもしれません」
そう言って、一旦場を仕切り直した奥平さんの申し出に、私はしばらく考えて控え目に頷く。
最近は主任のプロ並みの料理もとんとご無沙汰で、あまり器用なほうではない私は、仕事の疲れもあって、ご飯を簡単に済ませすぎている。
一人で摂る食事にも味気がなくて切ないと思っていたところだし、たまには誰かとテーブルを挟んで会話のある食事もいいかもしれない。
寂しさに屈するつもりは毛頭ないけれど、せっかく奥平さんが気を使って食事に誘って下さっているのだから、うん、一度だけなら。
主任と上手くいっていないことは、何を聞かれても曖昧に笑って誤魔化しておけばいい。
「ぜひワリカンでお願いします」
駐車場に向かって歩き始めた奥平さんの背中を小走りで追いかけながら言えば、彼は柔らかな顔でふわりと微笑み、私の買い物袋とバッグをまたヒョイと唐突に奪うと「自分で持てますから!」と恥ずかしがる私を見てクスッと笑う。