鬼系上司は甘えたがり。
 
奥平さん、やっぱりイジワルだ……。

私の反応を見て楽しむ節があるところは奇しくも主任と一緒で、正反対のちょっかいの出し方だけど、それがかえって主任を思い出させる。


主任は今頃、何をしているんだろう。

主任とは違う背中に付いていきながら、それでも私の胸は飼い主を想って切なく疼いていた。


それから連れられたのは、鍋専門店だった。

以前、由里子と行った、冬になると鍋メニューが超充実してしまう不思議居酒屋ではなく、本物の鍋専門店を迷うことなくチョイスするところが、やっぱり奥平さんらしいと思う。


混み合う時間帯にはまだ少し早かったようで、テーブル席か、簡単な仕切りで区切られた小上がり席かを選べた私たちは、「ずっと歩きっぱなしでしたし、ゆったり膝を折って食事しましょうか」と私を気遣ってくれた奥平さんの言葉で男性店員に小上がり席に通された。

オーダーした鍋は、それぞれモツ鍋とトマト鍋。

平たく表現するところの内臓なんていうものを食べそうにない顔をして早々にモツ鍋に決めた奥平さんは、驚いた顔をしていたのだろう私を見てクスクス笑うと、意味ありげに「実は俺、肉食なんです」なんて言って悪戯っぽく笑う。
 
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