鬼系上司は甘えたがり。
そんな彼のペースに、今日一日、なんだかんだと巻き込まれ気味の私は、これ以上は巻き込まれまいとグッとお腹に力を込めて「私の彼氏は肉食獣ですよ」と当たり障りなく返しておく。
すると奥平さんは「ふふ、手強いですね」と、またしても意味深なことを呟くものだから、私たちの席の辺りだけ妙な緊張感が漂ってしまうのは、きっとお互いに気のせいではないはずだ。
けれど、そんな中でも鍋は美味しい。
それぞれ一人前ずつオーダーした鍋をシェアし合いながらハフハフ食べる鍋は、さすが鍋専門店だけあって素材、スープ、どれを取っても実に美味で、内臓系はあまり得意ではない私も甘味噌でクツクツと煮込まれたモツに思わず「ん〜!美味しい!」と唸り声を上げてしまった。
「やっぱり女性はトマトが好きですね。あと、豆乳とかコラーゲンとか。ホテルの女性限定メニューも、すごくご好評を頂いています」
それから十数分だろうか、他愛ない話をしながら半分ほど鍋を食べ進めたところで、奥平さんは私からお裾分けしてもらったトマト鍋のスープを飲み干すと、しみじみと言った。