鬼系上司は甘えたがり。
主任とつき合う前は、仕事と恋愛の両立が難しいと自分で勝手に決めて、映画で疑似体験をすることで満足感を得られていたけど、現実の恋は思ったよりずっと素敵で、主任のおかげもあって自分なりに両立出来ていたように思う。
一人でいるより二人で--主任といるほうが癒されるし、より多くの幸せを感じられた。
仕事以外でこんなに人に尽くしたいと思ったのは主任が初めてで、だからもう、恋愛映画で満足していた頃の自分には、きっと戻れない。
「……」
「渡瀬さん?」
主任に甘く毒される日々はもう帰ってこないのだろうか、なんて思っていたら胸が苦しくなってしまって、急に箸が止まった私を心配して、奥平さんが気遣わしげに声をかけてくれた。
「いえ、食べ過ぎたのかな、ちょっとお腹が苦しくなってしまって。何でもないですから」
「……無理しなくて--」
「無理なんてしてませんよ」
けれど私は、奥平さんの言葉を途中で遮り、笑顔を作って首を振ると、スープに口を付ける。
すでに奥平さんには色々と勘付かれているとはいえ、主任の預かり知らぬところで人に相談するのは違う気がするし、なんだか憚られる。