鬼系上司は甘えたがり。
それに何より、奥平さんとは今後もビジネスパートナーとしていい関係を築いていきたい。
ついうっかりボロが出そうになってしまったけれど、ここは一つ、これ以上は触れない方向でどうか場を収めてもらえないだろうか。
お互い、大人なんだし。
けれど。
「渡瀬さんは、どうして俺がここまであなたに踏み込もうとしてるか分かってないですね」
一つ息を吐き出した奥平さんは、テーブルの上で手を組み、じっと私を見つめながらそう言う。
「仕事相手だからとか、世話好きだからとか、そういう気持ちで踏み込もうと思ったことなんて一度もないですよ。……好きになっちゃったんです。あなたのことが。彼氏がいるのに」
「そ、んな……ちょっ、ちょっと待っ--」
「驚きましたか? でも俺は、ずっと願ってましたよ。ペンダントトップを失くしたことがキッカケで彼氏と上手くいかなくなること、どうにもならなくなって俺を頼ってくれること。1ヶ月探し続けた俺に心が動いてくれないかなとか、そういう下心だってずっと持ってました。つまり、あなたを俺のものにしたいから、少しでも弱みに付け込もうとしてるんです」
「……」