鬼系上司は甘えたがり。
 
「なによ、相談料でしょ、相談料。弁護士なんか一時間でウン万円なんて掛かるところもあるんだから、私に奢るくらい安いもんじゃない」

「……そ、そういう問題?」

「そうよ。さて、今からお店のリストアップしておかなきゃ。ワインとピザが美味しいお店がいいな〜。もちろん、ウチの雑誌のクーポンが使えるところにしておくから、安心して」

「……」


けれど、正当な言い分なのかどうかはひとまず脇に避けるとしても、彼女の持論によると弁護士さんへ相談するより安上がりらしく、もはやこの決定は覆りそうにないことが窺える。

目をキラキラさせながら計画を立てはじめる由里子に『ただの屁理屈でしょ』という台詞が喉まで出かかったけれど、いつも相談に乗ってもらっている手前、ぐっと堪えるのが礼儀だ。


「ハイ、覚悟しておきます……」


そう言って、私は頼もしくもちゃっかり者の由里子嬢の前にがっくりと頭を垂れたのだった。

ていうか、クーポンが使えるお店をチョイスしてくれるからって、それって安心なのかな。

食べっぷりによっては案外そうでもないような気がしてくるのだけども……うーん、果てしなく頼りにならない安心材料を提示されたものだ。
 
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