鬼系上司は甘えたがり。
それから手早く彼女に指示を送ると、私は素早く身支度を整え、寒空の元へ駆け出していく。
主任はきっと、私に余計な心配を掛けさせまいと一人で何もかもを解決しようとしている。
ハロウィンの夜に『忘れるなよ、薪は来年も俺と一緒だ。ずっとだ』と言ってくれたことを。
クリスマスの夜、思いがけなく高価な首輪に尻込みし、貰ってもいいのだろうかと不安がる私に『俺は今後お前を裏切ったりはしないし、何があっても助ける、守る』と甘く囁いてくれた幸福感と安心感に包まれたあの約束を。
主任はずっと必死に守ろうとしていた。
そして今も、私のために守ろうとしている。
「ほんと格好つけなんだから……」
そう呟き、会社を出たところでバッグからスマホを取り出し、逸る気持ちをなんとか落ち着けながら、私はある人の番号を呼び出した。
たぶん、この人の力添えなくしては、きっと私は主任の所在を掴めないだろう。
すぐに電話に出られないことも往々にしてあるだろうと思っていたものの、運良く3コール目で通話に切り替わった電話の向こうの相手に、私は一縷の望みをかけて声を発する。