鬼系上司は甘えたがり。
「気持ちよく言い切りますね……」
「当たり前だ。じゃあまず、手始めに、パスタ食ったら膝枕でオードリーを観させてくれ」
「へい」
清々しいくらいドSな口調で甘えてくる主任に、私はもはや抵抗するだけ無駄だと諦める。
主任が言った通り、映画館で遭遇してしまったのが運の尽きだと思って甘えられるしか、私の進む道はないようだ。ガックリ……。
それから約2時間--。
膝枕をご所望した主任は今、日頃の仕事の疲れからか、人肌の温かさに気が緩んだのか、私の膝の上でスースーと寝息を立てている。
オードリーは今日も可愛かった。
何度も観ているはずなのにデートのシーンではオードリーの可愛らしさに胸キュンしたし、王女と新聞記者として会うシーンではウルウルするし、やっぱり『ローマの休日』は最高だ。
けれどこちら--『主任の休日』につき合わされ、身動きが取れなくなっている私の休日は、一体いつ訪れてくれるのだろうか……。
帰りたいけど帰れないこのジレンマ。
気持ちよく寝ているのに無闇に動かせないし、いい加減私も眠たくなってきっちゃったし、いっそ思い切って寝てみようかな。
主任の柔らかな黒髪を撫でながら、そう思う。