鬼系上司は甘えたがり。
「ごめん多賀野くん。今まで私、多賀野くんのことを忘れてた。クリスマスに街で偶然会ったときだって全然思い出せなくてごめん。だからどうか主任のことだけ責めないでほしいの。多賀野くんを苦しめた責任は私にもある」
直接の原因は主任かもしれない。
けれど、彼がさっき言っていたように、結局私は主任の味方をするようなことを言った。
今はっきりと思い出したのだ。
入社して間もない頃、指導係についていた主任の連日の厳しい指導に『皆の前で大声で罵られるのとか、俺にはもう無理だ。今すぐにでも会社辞めたい……』と胸の内を吐露した多賀野くんを元気づけるつもりで、確かに私は言った。
『新田主任は多賀野くんに期待してるんだよ!一番に仕事を覚えて欲しいから、きっとそれでだって!新人の私でも分かるもん、主任、すごく仕事のデキる人だよ。確かに言葉はキツいところがあるかもしれない。だけど、辞めたいなんて言わないでもう少しだけ頑張ってみよ?』
と。
そのとき多賀野くんは、きつく唇を噛みしめたまま、ただ無言で俯いていた。