鬼系上司は甘えたがり。
精神的に追い詰められていた多賀野くんに追い打ちをかけたのは、きっと私だ……。
すると、そんな私の頭上から彼が言う。
「そんなこと言ったって今さら遅いんだよ!俺はあれから3年、忘れたくても忘れられなかった!それがどうだよ、渡瀬は忘れてたんだろ!? そんなお前に説得力なんてあるか!」
「……ッ。ごめん……」
「だから、もう全部遅いんだって!」
「うん。だけど、ごめん」
「……」
多賀野くんの言っていることは正しい。
彼も言ったけど、3年も忘れていた私が何を今さらという感じだし、謝ったところで多賀野くんの気持ちが楽になるとも当然思っていない。
でも、私に出来ることはこれしかないから。
「……ごめん、多賀野くん。私、何度だって謝るよ。一番辛いときに味方になってあげられなくてごめん。気持ちを汲んであげられなくてごめん。“同期”ってすごく特別な存在だよね。……なのに、辞めていく多賀野くんに何もできなかった。そんな自分がすごく恥ずかしい。今さらなのは分かってる。でも、本当にごめんなさい」
これは単なる“逆恨み”なんかじゃない。
3年前から必死に訴え続けていた彼からの、今すぐ助けて欲しいという切実なSOSだ。