鬼系上司は甘えたがり。
 
それまでの真剣身を帯びていた空気から一変、脈絡なく話の内容を個人的な方向へと向けられた私は、ひどく間抜けな声が出てしまった。

てか、毒舌鬼畜野郎って……。

しかし主任は今もあの頃と変わらず毒舌鬼畜街道を大股開きで突き進んでいるので、フォローしようにも少しも言葉が浮かんでこない。

うう、ビミョーに切ないな。


「……うん、まあ、多賀野くんのご想像の通りかな。でも私には王子様だから、どこが好きかって聞かれたら『全部』って答えちゃう」

「ふーん。俺には分かんないな」


無意識に緩んでしまう頬を隠しきれず言うと、多賀野くんはたいそう白けた表情を浮かべてそう言い、主任と私を見比べながら腕を組む。

うん、分かるよ多賀野くん。

性別や性格が違えばその人に持つ印象だって変わって当たり前だし、多賀野くんにとっての主任は嫌な思い出ばかりの人だから、無理にその印象を変えてもらう必要なんてどこにもない。

ただ、これだけは言えるんだけど。


「主任は分かりにくい人だからね。私には主任の分かりにくいところが分かっちゃうってだけの話だよ。なんかもう、中毒症状とか末期状態って感じで、自分でもちょっと恐いくらい」

「……ご愁傷さまだね」

「ふふ、まあね」
 
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