鬼系上司は甘えたがり。
 
その後も主任と奥平さんは不毛なバトルを繰り広げ、多賀野くんはさらに挙動不審にオタオタし、私はすっかり蚊帳の外という状況が続く。

しばらくすると、さすがに不毛なやり取りだったと気付いたらしい二人は同時にこちらに向き直り「どっちがいい?」と聞いてきたのだけれど、もう本当にどっちでもいい気分になっていた私は、はぁ……と深く息を吐き出すと。


「主任が着せたい方でいいです……」


この無意味すぎるやり取りに終止符を打って差し上げることにしたのだった。

私の答えを聞いて、主任が奥平さんに向かってニヤリと口の端を持ち上げたのは言うまでもないことだったのだけれど、奥平さんは相変わらず「ふふ」と笑っただけだったので、腹の底が見えないぶん、微妙におっかない……。
 

--とにもかくにも。

これで全ては解決で、やっと私たちの元に平穏な日々が帰ってくることとなった。

主任の足元にはあの革靴が、私の首元にはクリスマスに貰った高価な首輪がキラリと光り、今日も今日とて仕事に私情は一切挟まない主義の主任に「オラ薪、いつまでちんたら仕事してやがる!火にくべて跡形もなく燃やすぞ!」とパワハラまがいの主従関係を強いられ、ひとたび鬼の仮面を脱ぎ捨てれば甘く毒される日々。
 
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