鬼系上司は甘えたがり。
そんなある日。
桜の花が盛大に咲き誇る中行われた新入社員歓迎会からの帰り道、今日は珍しく飲み過ぎたらしい主任に肩を貸しながら歩いていると、ふと足を止めた主任がポツリと独白をこぼした。
「……薪は俺が好きか?」
酔っているせいか、とても弱々しく聞こえたそれは、多賀野くんとのことがあってから気付いたのだけど、自信を失くしているときや自分の価値を見失いかけているときなどによく見られる傾向で、言うなれば主任の“不安な気持ち”そのものを現した台詞なのだと思っている。
確かにさっきの歓迎会でも新人の女の子に話し掛けた際に「ひゃわっ!」とビクつかれていたし、普段の主任は基本的に鬼だから、いくら私との掛け合いがじゃれ合いだと分かっていても彼女にとってはきっとまだ恐いのだろう。
……これは、もしかしなくても「ひゃわっ!」を相当気にしてしまっているらしい。
「ふふっ」
主任はきっと、何も言わない。
だから私は、それに気付いてからは「もちろんです」の後にこう付け加えることにしている。
「どんな主任も全部好きです」
言うと、主任の顔が泣きそうに歪む。