鬼系上司は甘えたがり。
あの日、深夜の映画館で人目もはばからず号泣する主任に遭遇してしまった瞬間から、きっと私の日々は今まで観てきたどの恋愛映画よりも運命的でドラマチックで、こうして甘く毒されることが決定づけられていたのだろう。
私にだけ甘えたがりな、このS系上司に。
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それから1ヶ月と少しが経った6月10日、記念すべき主任の30歳のバースデー。
この日のために練習し、腕によりをかけて作った料理や、予約しておいたホールのバースデーケーキ、奥平さんがわざわざ会社まで宅急便で送って下さった美味しいワインなどが所狭しとテーブルに並ぶ中、私は火を灯した蝋燭を吹き消す主任の様子を写真に収めようとスマホを構え、シャッターチャンスを狙っていた。
「主任、早く早く」
「……お前な、いい加減にしろよ? いい歳をした男がこんな真似できるわけないだろうが。なんだそのスマホは。今すぐ下ろせ」
「むぅ」
しかし、主任はこの通り。
なかなか火を吹き消さないので急かしてみれば案の定、主任は苦々しい顔をしながらそう毒づき、私は仕方なしにスマホを下ろしながら、それでも、せめてもの抵抗として唇を尖らせる。