鬼系上司は甘えたがり。
でも、ただ一つ確かなことは、主任には私に代わる存在はいないということと、私にももちろん、主任に代わる人はいないということ。
私が勤める会社には、誰もが恐れる鬼がいる。
仕事は丁寧かつ迅速で、社内外から絶大な信頼を得ていて、黙っていれば華があるその人は、親しみを込めて“鬼の新田真紘”と呼ばれている。
無論、ひとたび口を開けば容赦がない。
毒舌、鬼畜、超ドS--私なんて何度火にくべると脅されてきたことか。
仕事以外では絶対に関わりたくない。
そう心に固く誓っていたはずなのに、どうしてこんなに目の前の鬼が愛おしいのだろう……。
「プロポーズくらいで泣くなバカ、そういうのは結婚式まで取っておけ。……ああもう、仕方ない。こうなったら、腹黒奥平の望み通りあそこのホテルで盛大な式を挙げてやる。これであの人も綺麗サッパリ諦められるだろ」
そう言い切った主任は、相変わらず主任だ。
好きとか愛してるとか、女の子なら一度は夢を見る甘い台詞には程遠いことしか言えないこの人に、私は日々、甘く毒されている。
そしてそれは、夫と妻、あるいはパパとママと形を変えてもきっとずっと続いていくだろう。