鬼系上司は甘えたがり。
例えば彼女とか--とは、さすがに言えなかったけれど、何が悲しくて鬼と週末をランデブーしなきゃならんのだ、とは普通に思う。
昨日の埋め合わせなら絶品のクリームパスタとオードリーでもう十分してもらいましたから、お願いですから私に週末をください。
「何言ってんだ。お前以上に連れ回して楽しいヤツなんて他にいるか。俺がしたいって言ってんだ、黙って付いてくりゃいいんだよ」
「うぇいうぇい!?」
「それにな、薪はもうちょい外に出ていろんなものを見たり感じたりしたほうがいい。だからチンケな契約しか取ってこられないんだ」
けれどさすが鬼、私の願いを聞き入れてくれるつもりはハナからなかったらしく、おまけに仕事の欠点までズバリ指摘されてしまった。
私たちが勤める広告会社のフリーペーパー編集部門は、主に広告を載せたいお店からの広告収入で毎月の誌面発行が賄われている。
老舗温泉旅館や高級ホテル、その他大口の契約を取ってくる主任とは違って、例えば私は、開店間際の居酒屋さんや個人経営の美容室など、チンケと吐き捨てられてしまったけれど、主任に比べてそういう小さいところの契約が多い。